賃金規程は労働時間や業務の内容に相応しいものとして適正に作成されていますか。
また、管理監督者と一般労働者の賃金格差はどのように設定されていますか。
外で仕事をすることの多い営業マンの賃金規程はどのようになっていますか。
会社の休日に合致するように適切に作成されていますか。
賃金規程があいまいだったために、多額の未払い残業料が発生することもまれではありません。
また、賃金規程は労働者のモラルアップ、モチベーションアップにつながるものにする必要があります。賃金規程でお悩みの経営者様、あるいは課題をかかえたままになっている経営者さまはお気軽にご相談下さい。
U 賃金規程作成の要諦
賃金規程を作成する上で、会社の現状に鑑み、次のような点について検討をしておきたいものです。
1 わが社の週所定労働時間
労働基準法条はは所定労働時間を1日8時間週40時間と定めています。
ただし、常時10人未満の労働者を使用する特例事業所(物品の販売、理容、保健衛生の事業、料理、飲食店等)に該当する企業については一部週44時間とすることも認められています。
わが社は週何時間を所定労働時間とするのかを明確にしておきましょう。
2 事業場外みなし労働時間制について
たとえば、営業マンで終日外で働いているような場合、逐一労働者の勤務実態を把握するのは
難しく、労働者の裁量に委ねられていることが多いのが現状でしょう。
このような場合、所定労働時間働いたこととみなす、「みなし労働時間制」をとることも可能です。しかし、事業場外で業務に従事する場合でも、企業の具体的な指揮監督が及んでいる時は、
労働時間の算定が可能なので、みなし労働時間制の適用はありません。
具体的には次の場合です。(昭63.1.1 基発1号)
<昭63.1.1 基発1号の定め>
@何人かのグループで事業場外労働に従事する場合は、そのメンバーの中に労働時間を管理する者がいる場合 A事業場外で従事するが、無線やポケットベル等によって随時企業の指示を受けながら労働している場合 B事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおり業務に従事し、その後事業場にもどる場合 |
<裁判事例>
阪急トラベルサポート事件
添乗員の添乗業務に「みなし労働時間制」は適用されないとして係争になっている事案。
※ 具体的な取扱いについては、企業毎の現状に即し個別の検討を要すると言えるでしょう。
3 変形労働時間制の採用について
毎月、月末に業務が集中するとか、あるいは季節によって業務の繁閑が激しいような場合、
一年当たりの変形労働時間制、あるいは一月当たりの変形労働時間制を採用することができます。
あるいは、さらに進んだ制度としてフレックスタイム制や専門業務型労働時間制を採用することも可能です。
4 管理監督者問題
管理監督者とは、労務管理(労働条件の決定その他)について経営者と一体的立場にある者の意であり、名称や各企業での取扱いにとらわれず、実態に即し判断されます。
(昭22.9.13 発基17号、昭63.3.14基発150号)
その実態に即した判断では、「職務内容、責任権限、勤務態様に着目する」とともに、
「賃金等の待遇面について」「その地位にふさわしい待遇がなされているか否か」等に留意する必要があります。
就業規則(賃金規程)等で、「課長以上の者を管理監督者とする」とか、「5等級以上の者を管理監督者とする」と、職位や職能を基準に管理監督者の線引きをしても、そのとおりになるとは限りません。
V 残業代の支払い方法について
1 残業代の支払い
「いまだに基本給の中に残業代が含まれている。これは採用の時からの約束である。」といった会社があります。
いったん、係争になった時は過去2年間の未払い残業代を請求されることは稀ではありません。
さらに、裁判になった時は、さらに同額の付加金を請求されることがあります。
こういった極端な例以外でも、残業代が適正に支払われていないケースは多く、
IT技術が発達し容易に情報の入手しやすい今日、もはやサービス残業当たり前の会社は
存続すら危機に直面する可能性があります。
2 固定残業代について
固定残業代をとる会社も多くあります。
基本給とは別にみなし残業代として、週20時間、30時間、45時間といった具合に
残業代をあらかじめ給与に組み込む方法です。
しかし、この方法をとったからといって残業代の計算が不要になるわけでなく、
実際の残業時間が固定残業代で定めた時間を超過した場合は、
超過残業代の支払い義務が生じます。
また、実際の残業時間が固定残業代を下回っていたからといって、
固定残業代を削減するわけにもいきません。
導入に当たっては、賃金テーブルを細かく算出するなど、きめ細かな対応が必要となります。
その他、賃金規程については、会社の実情や経営者の考え方に合わせ、
個別に検討をしてゆく必要があります。
(参考文献)
「労使トラブル和解の実務」(弁護士 浅井 隆 日本法令)