文書作成日:2025/10/09
社会福祉施設における、賃金不払の監督指導の事例
厚生労働省より、令和6年の「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果」が公表されました。
令和6年に全国の労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案は、前年比1,005件の22,354件、金額にすると前年より70億円超上回る172億1,113万円となりました。このうち、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたのは96.2%にあたる21,495件です。
業種別にみると、保健衛生業は件数では全体の15%、対象労働者数では24%、金額では15%を占めています。
報告の中に、社会福祉施設における監督指導による是正事例がありましたので、以下にご紹介します。
【事案の概要】
1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働が疑われる事業場に立入調査を実施したところ、次の実態が判明。
- 割増賃金の基礎として算入すべき賃金(職能手当等)を除外して割増賃金が計算されていた。
- 1週間について40時間を超える時間外労働に対する割増賃金が支払われていなかった。
- タイムカードで出退勤時刻を把握する一方、時間外労働に対する割増賃金(残業代)は労働者の自己申告制に基づいて支払われていた。タイムカードの記録と比べて自己申告された時間外労働時間が大幅(最大2時間)に少ない労働者が複数認められた。
【指導内容】
- 割増賃金の基礎として算入しなければならない賃金を全て足し上げた上で、割増賃金を再計算し、実際の支払額との差額を支払うこと。
- 1週間について40時間を超える時間外労働に対する割増賃金を再計算した上で、実際の支払額との差額を支払うこと。
- 過去に遡って各労働者から事実関係の聞き取りを行うなどの実態調査を実施し、実際の支払額との差額の割増賃金の支払いが必要となる場合には、追加で支払うこと。また、労働時間を適正に把握するための具体的方策を検討・実施すること。
【事業場の対応】
- 過去に遡って正しい単価で割増賃金を再計算し、不足が生じていた労働者に対し、追加で差額の割増賃金を支払った。
- タイムカードの記録と自己申告された時間外労働時間に違いがあったものについて、過去に遡って実態調査を実施したところ、割増賃金の不払が認められたため、追加で差額の割増賃金を支払うとともに、今後、違いがあった場合には、管理者が日々その理由を確認することとした。
上記の事例では、割増賃金の適正な支払いについて指摘がされています。
割増賃金の基礎として算入しない賃金は、以下の7種類です。それ以外については、割増賃金の基礎に算入する必要があります。
割増賃金の基礎となる賃金 |
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@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、F1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金 |
同報告ではこの他にも、業種は異なりますが、始業前に行う清掃作業に賃金が支払われていない事例に対する是正事例も紹介されています。報告の全文は、以下のサイトでご覧ください。
[参考]
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
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