人事制度・人事評価制度
人事制度・人事評価制度
1 人事制度、人事評価制度についての基本的考え方

人事制度・人事評価制度では社長の思い(経営理念)が反映されていることが重要です。
単に従業員を評価するためのものでなく、人材の育成のためのものでなければなりません。

いくら立派な人事評価制度であっても、借り物の評価制度ではうまくゆくわけがありません。

人事制度・人事評価制度は会社の歴史・風土・業態、
経営者の強い思い(経営理念)が反映されたものであることが重要でしょう。

福岡労務経営事務所では、社長様や人事担当役員、役職者と一緒になって、
相応しい人事制度、人事評価制度の構築を支援いたします。


2 人事制度・人事評価制度導入の流れ

◇人事制度は何のためにあるのか

人事制度、人事評価制度は適材適所の人事配置を行い、人材を育成してゆくためのものであると言えるでしょう。単に評価をして格差をつけるためのものではありません。

そのためには次のような要件が必要となるでしょう。

◇会社の目的、経営理念が明確であること
会社は何のために存在しているのか。
その会社の事業目的は何か、経営理念は何か。
まず、経営者のぶれない考え方が必要になります。

会社は経営者で99%決まると言ってよく、経営者の考え方がぶれていては、
社員は不安になりとまどうばかりです。
どこに行くかわからない船に乗っている乗客が不安になるのと同じ理屈です。

◇行動指針、事業計画について
会社の事業目的、経営理念に基づいて、行動指針、事業計画が策定されます。
この際、トップダウン的に決めるのも一つの方法ですが、
従業員が参画して構築してゆく考え方があります。

この場合、従業員の能力や意識レベルによって格差が生じてくることが考えられ、
会社の業態、従業員の能力等に応じて、トップダウン形態がいいのか、
ボトムアップ形態がふさわしいのか選択する必要があると言えるでしょう。

◇等級(クラス・グレード)の設定
意図的に何らかの価値基準をもとにして人や仕事に序列をつけ、総合的一律的な人事管理に活用します。

職階(肩書き)
能力(職務遂行能力)
役割(職責)

が使われます

@職階等級制度
役職を基準に等級を決定する方法です。
厳格な運用をすると、ポジションが空くか増えるかしないと上位等級に上がれないことになり、
組織の沈滞を招く可能性があります。

A職能資格(等級)制度
能力の高さに応じて資格(等級)を決定する方法です。
能力があると認められれば、役職に就かなくてもほぼ同等の処遇が受けられるため、
どうしても評価が甘くなるという問題があります。
能力の概念が不明確になり、客観的な計測が難しいという側面もあります。

B役割等級制度、責任等級制度
職責(役割や責任の大きさ)を基準に等級を決定する方法です。
ただし、職責の合理的な設定の方法は今後の課題です。

Cその他
職務調査をベースに米国型職務給制もトライされましたが、
「就職ではなく就社」と言われる柔軟に職務を編成する日本的経営に
適合することが難しいとされたケースが多いと言えます。


3 人事制度・人事評価制度導入に際して検討したいこと

◇自己申告制度

自己申告制度はぜひ導入したい制度です。
トップや上司からみれば、「わかってくれているだろう。」と思っていることが、
部下からみれば、違った意味で捉えられていることが多いのが現実でしょう。
また、逆に部下の思いがトップや上司に伝わっているというものでもありません。

組織の不幸の始まりはコミュニケーション不足にあるといってよく、
それだけ人間関係「ヒューマン・リレーション」が重要と言えるでしょう。
そうした、人と人の溝を埋める方法の一つが「自己申告制度」と言えるでしょう。

また、人事評価制度は絶対的なものではありません。

部下の思いを伝え、トップや上司の考え方と擦り合わせを行う視点からも自己申告制度は重要と言えます。会社や業種によっては、自己申告制度そのものを定着させるのに時間がかかることも予想されます。

一歩、一歩、取り組むしかないでしょう。

また、上司が「これを書いておいてくれ。」式に形骸化してしまうことも排除する必要があります。

◇目標管理制度について
自己申告制度と重なる部分もあるものに、「目標管理制度」があります。
これも会社や業態や従業員の意識レベルによって、導入の仕方が変わってくると言えるでしょう。

数値化が可能な定量的なものと、
数値化が不可能なたとえば行動計画といった定性的なものがあります。
定量的なものが単に数値管理指標になって一人歩きするとお仕着せになって、
逆に従業員のモラルを下げることもあり得ますので注意が必要と言えるでしょう。

◇クレドについて
「クレド(Credo)」と呼ばれる文言が注目を浴びています。
世界的な医薬・医療品メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンや
高級ホテルを展開するザ・リッツ・カールトンが、社員の「価値基準」、行動を起こす際の判断のよりどころにして、高い業績で躍進し続けていることで有名になりました。

ラテン語のクレドは、日本語では「信条」のことで、
そこから「企業理念」や「社是・社訓」と訳されています。
これなら、多くの会社に存在していて、職場の「額縁」に入って掲げられています。
「クレド」は今ある企業理念を、社員が行動できるように分かり易く簡潔にしたものと考えられています。

◇成果主義人事制度とコンピタンシー評価
経済がゼロ成長、マイナス成長となり、国際的競争条件の激化や急速な高齢化が人件費を圧迫する中で、成果主義人事制度の推進が必要とされた時代がありました。
しかし、成果主義を徹底し、成果と処遇の連動性を強めてゆくと、
個々人は短期的な業績や結果ばかりを重視するようになり、
達成しやすい目標を設定する傾向に陥ったり、職場内のチームワーク、
あるいは、マネージャーであれば、部下育成をおろそかにする等の問題が生じてきました。

これを防ぐために、業績や結果だけでなく、そこに到るまでのプロセスも併せて評価する必要があり、この過程でコンピテンシーの導入が進んできました。


(参考文献、参考資料)
株式会社名南経営の諸資料(日本人事労務コンサルタントグループ)
クレドが「考えて動く」社員を育てる!(吉田誠一郎 日本実業出版社)
コンピテンシー活用の実際(相原孝夫 日経文庫)

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