1 はじめに
一人でも加入できる合同労組(ユニオン)から団体交渉の申し入れがあった。
予期せぬ突然の出来事でどうしていいかわからない。
とりわけ初期対応が大切です。
労働審判や裁判に至るまでに、適切に対応し解決を図るには特定社会保険労務士の
活用が効果的です。
逆に、初期対応を誤って労働審判や裁判になると、時間と経費も莫大になります。
お気軽に福岡労務経営事務所にご相談下さい。
2 労働組合法で禁止されている不当労働行為
労働組合および労働組合員を守っている法律が「労働組合法」です。
この法律で禁止されていること、使用者としてやってはいけないことを知っておく必要があります。
不利益取扱の禁止 | 組合活動を行ったからという理由で、 労働者が解雇などの不利益な取扱いを受けることの禁止 <解雇以外の不利益な取扱事項> ・配置転換・転勤 ・減給、定期昇給の停止、賞与の減額 ・出勤停止 ・再採用拒否、雇用契約の更新拒否 ・合意退職の強要 |
団体交渉拒否の禁止 | 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒否することの禁止 1 交渉の席につかない場合 2 席についても誠実に交渉しない場合(不誠実団体交渉) 回答の根拠を示さなかったり、交渉権限のない者による団体交渉をすること。 労働組合法は、会社が必要に応じて回答の根拠を説明し、 必要に応じて資料を提供すべきであることを求めています。 |
使用者の支配介入の禁止 | 労働組合結成の妨害、労働組合を敵視する発言、 労働組合から脱退するよう勧めるなど、組織の弱体化・形骸化をねらった行為 ただし、会社施設内での組合活動を拒んでも、原則として支配介入にはあたりません。 |
使用者の経費補助の禁止 | 使用者の労働組合に対する経費補助の禁止 ただし、「最小限の事務所の供与」「「労働者が労働時間中に 時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉すること」 など、最小限の組合に対する援助は認められています。 |
労働委員会への申立 などを理由とする 不利益取扱の禁止 |
労働委員会に救済措置の申立をしたことを理由に報復措置を講じることの禁止 |
3 団体交渉申入書が届いたら
やってはいけない6つの行動パターンがあります。
これを行うと闘いは不利になります。
団体交渉を拒否する |
団体交渉をやらないと不利になるだけ。労働委員会で負け、さらに |
第2労組を作ろうとする |
社長が組合を創るのは違法。 |
組合委員長を解雇しようとする |
委員長が解雇を不当労働行為として裁判所に訴えることもあり、 |
個別面談し組合を辞めるよう懐柔する |
労働組合の運営に介入するものでり、支配介入行為として禁止されています。 |
組合委員長と裏交渉する |
金銭を渡して裏交渉をしようとしても意味がありません。 |
新会社設立を計画する |
新会社を作って非組合員を移籍し、旧会社を解散させるなどは絶対にやめるべきです。裁判になれば負けるのは確実です。 |
誰が労組に加入したか、争点は何か |
誰が労組に加入したか、争点は何か。 |
加入した従業員が退職者でも交渉に応じる |
解雇をきっかけに合同労組に加入した元従業員が |
支部・分会名があったら組織拡大に力を入れている |
団体交渉申入書に支部、分会名が記載されていた |
組合トップによって今後がわかる |
支部の執行委員長や分会長が人望のある人物かどうかが重要なポイント。 |
組合員が全員わからなくても団体交渉に応じる |
労組には組合員を明らかにする義務はありません。 |
上部団体はインターネットで調べられる |
労働組合は大きく分けて |
4 団体交渉に勝つための交渉術
貸し会議室など外部の施設を利用し使用者が全額負担 |
時間制貸会議室(会社近くで交通の便を考慮。費用は会社持ち) |
交渉時間は2時間1本勝負とする |
団交が2時間を超える場合は、一度中断し、別の日に再開する。 |
就業時間中には行わない |
原則、就業時間外とする。 |
社長や代表が団体交渉に出席する義務はない |
出席者を決める(代表取締役は避ける) |
セクハラ・パワハラの当事者は団体交渉に連れていかない |
当事者(加害者と言われている社員)を連れていっても話し合いがこじれるだけ。 |
上部団体の役員の参加も拒否しない |
労働組合法では、上部団体の団体交渉権を認めています。 |
先手を打って数多くの団体交渉をセッティングする |
会社にとって、団交はやればやるほど有利になります。 |
1回目の団体交渉でイニシアティブを握る |
1回目の開催場所、進行の仕方を事前にきちんと検討します。 |
極端に多い人数が押しかけてきたら団体交渉を中止できる |
極端に多い人数(数十人程度)が押しかけてきたとしたら、話し合いになりませんので、その日は使用者側から団交を中止することは可能です。 |
回答書は「言った」「言わない」のトラブルを避けるために必要 |
要求書への回答は、口頭で行ってもよいが、意思を過不足なく伝えるのはむつかしいので、回答書を作成した方がいい。 |
交渉の録音はメリットとデメリットを理解したうえで判断する |
書記役を一人おいて、団体交渉の記録を筆記してもらったほうがいい場合もある。 |
余計なことは喋らない |
会社はつねに受身でいい。求められたら説明し、聞かれたら答える。 |
罵声や野次は許されない |
労組側の団交出席者が、罵声や野次を言ったら、まず、会社側の団交出席者は口頭で、そのような発言をしないよう注意します。 |
「不当労働行為だ」と恫喝されても応じられない要求は拒否する |
組合の言うことを受け入れないからといって、不当労働行為になるわけではない。組合の要求に使用者が応じる義務はありません。 |
その場かぎりの解決をしない |
できないことははっきり「できない。」と言うべきである。 |
「社長を出せ」「すぐに答えろ」には応じなくてよい |
突然聞いた話であれば、持ちかえってかまわない。「聞いたばかりで、社内で話し合わないと結論が出ない」と回答すればいい。 |
交渉の流れをつかみピークを見抜く |
団交で泣いたり、わめいたり、怒鳴ったりと激しく感情がぶつかり合う時は、ピークのサインであることが多い。 |
歩み寄りのサインをキャッチする |
歩み寄りのサインが出たら迷わずキャッチする。; |
金額は組合に先に提示させる |
組合が「1000万円」と答えれば、それが上限になる。 |
団体交渉が膠着状態になっても使用者から打ち切らない |
労組、使用者双方が、意見や提出すべき資料をすべて出し尽くすまでは、団交を打ち切るべきではありません。 |
団体交渉を重ねることで解決の糸口を見つけられる |
企業が資料などに基づいて自らの主張を裏付ける説明を続ければ、労組も実情を理解し、解決案を示してくれることもあります。 |
議事録に「サインしろ」と言われても即押印は御法度 |
必ずいったん社内に持ち帰り、合意できる内容で |
「前向きに検討する」は禁物 |
「検討します。」という言葉は、組合の要求を受け入れる |
交渉日以外に社長宅に組合員が来ても話し合いは拒否する |
一度でも家にあげたら、「休日の社長宅で交渉ができる」という前例を作ることになります。 |
事前協議条項には要注意 |
特に事情がない限り、事前協議条項を結ぶことは断るべきです。 |
5 合同労組(ユニオン)の企業に対する行動
合同労組(ユニオン)は団体交渉の他、次のような戦術・行動にでてくる可能性を
想定し、対応を進めます。
団体交渉 |
内 容 |
ストライキ・喧伝活動 | ストライキ(支部ができて、企業の過半数が合同労組の組合員の場合はあり得る) インターネットの書きこみ、新聞記事、ビラまき、得意先へのFAX送信、 街宣活動等) |
労働基準監督署・労働局への申告 | 合同労組は労働基準監督署に労働基準法違反を申告することが多い。 労働基準監督署など行政監督庁に申告する場合、お金は一切かかりません。 また、申告に対する行政監督庁の対応も比較的早いので、団体交渉の行き詰まりを打開しようとする狙いがある。 |
労働委員会への救済申立て、あっせん申請 | 使用者が不当労働行為を行った場合、もしくは労組や労働組合員が、使用者が不当労働行為を行ったと考えた場合、労組または労働組合員は、各都道府県の労働委員会に対し、 不当労働行為救済申立を行います。 労働委員会の命令に不服である場合、使用者、または労働組合員、労働組合は、原則として命令書の交付の翌日から15日以内に、中央労働委員会に再審査を申し立てることができます。 再審査の申立てを受理した中央労働委員会は、都道府県の労働委員会同様、調査、審問を行い、命令を下します。 |
裁判 | 都道府県の労働委員会や中央委員会の命令にも不服である場合、命令の取消の訴えを地方裁判所に提起することができます。 地方裁判所の決定に不服である場合は、さらに高等裁判所、最高裁判所へと上訴することができます。 労働組合にはお抱え弁護士がいる。 |
6 合同労組(ユニオン)対策の実際
@合同労組(ユニオン)から申し入れ書が届いた。
⇒福岡労務経営事務所にご連絡いただきます。
A原則として福岡労務経営事務所と顧問契約を締結させていただきます。
単に団体交渉が単独としてあるのではなく、
会社と一体となって解決にあたるべき性格のものであるためです。
ただし、現在、顧問社労士がおられる場合に、決して排除しようとするものではありません。
〇申し入れ書の内容、背景等のヒアリングの実施
申入書の内容を検討するとともに、そこに至る背景について詳しくヒアリングをさせていただきます。
〇就業規則、その他諸規程等の点検と現状確認
就業規則、賃金規程、その他諸規程を点検するとともに、
その運用状況について確認・擦り合わせをさせていただきます。
〇具体的な対応策と方向性の想定。
具体的な対応策を協議するとともに、大きな方向性を想定し、会社と協議します。
6 料金体系
基本料金は以下のように設定させていただきます。
ただし、案件の難易度等により、協議することがあります。
基本は顧問契約を締結いただき、会社の就業規則、諸規程、その運用状態等を熟知し、
経営者さまと一体となって取り組むこととしております。
顧問契約(労務相談顧問 or 手続き顧問)の場合 | 団体交渉は1回につき5万円(ただし、顧問料は別途) 打合せを別請求するかどうかは顧問料等により個別に設定。 |
顧問契約なし(ただし、就業規則変更を含む場合) | 60万円(団体交渉3回まで)+10万円(打合せ、団体交渉1回につき) 着手時30万円、終了時に残金 |
団体交渉のみのスポット契約 | 50万円(団体交渉3回まで)+10万円(打合せ、団体交渉1回につき) 着手時に50万円、終了時に残金(がある場合) |
(参考文献)
「社長は労働法をこう使え!」(弁護士 向井 蘭 ダイヤモンド社)
「会社は合同労組・ユニオンとこう闘え!」(弁護士 向井 蘭 日本法令 )
「合同労組・ユニオン 対策マニュアル」(弁護士 奈良恒則 日本法令)
「労使トラブル和解の実務」(弁護士 浅井 隆 日本法令)
「会社を守る ユニオン対策が2時間でわかる本(特定社会保険労務士 竹内 睦 自由国民社)